修繕計画

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築年数別・ビルの修繕タイムライン

長期修繕計画の立て方と大規模修繕の周期を解説

雨漏りや外壁の劣化、設備の不調——ビルを所有・管理していると、「今、何を優先して直すべきか」で迷う場面は少なくありません。修繕は建物の築年数によって必要な内容が移り変わっていくため、その大きな流れをつかんでおくと、突発的な出費や後手の対応を減らしやすくなります。

本記事では、東京都心の中小オフィスビルを前提に、新築から35年までの修繕タイムライン、部位・設備ごとの劣化の目安、そして大規模修繕の周期と長期修繕計画の立て方を整理します。ご自身のビルが「今どの段階にあるのか」を確認する手がかりとしてお役立てください。

茂木 健一(もぎ けんいち)

記事監修者

茂木 健一(もぎ けんいち)

SFビルメンテナンス株式会社 専務取締役

東京都心の中小オフィスビル*1を対象に、ビルの総合管理から漏水調査・外壁打診調査・大規模修繕まで、建物の維持保全を担う。ビルオーナー向けに長期修繕計画や設備の更新判断をテーマとしたセミナー講師も務め、建物の劣化診断と修繕計画に長く携わっている。

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なぜビルの修繕は「築年数」で考えるのか

建物は新築のときが最も良い状態で、そこから少しずつ各部位が傷んでいきます。人の身体が年齢とともに不調が出やすくなり、定期的な健康診断が役立つのと同じように、ビルにも築年数に応じた点検と修繕が欠かせません。

長期修繕計画とは、こうした劣化の進み方を見越して、「いつ・どこを・どのくらいの費用で直すか」をあらかじめ描いておく計画のことです。計画があると、修繕積立金などの資金の準備がしやすくなり、いざというときに慌てて高額な工事を発注する事態を避けやすくなります。

ただし、一度立てた計画をそのまま使い続けられるわけではありません。次のような不確定要素があるため、数年ごとの見直しが必要だと考えられています。

  • 建物・設備の劣化状況(進み方は建物ごとに異なります)
  • 社会環境や生活様式の変化(テナントのニーズの移り変わり)
  • 地震・台風など予測しにくい災害
  • 新しい材料・工法の登場による周期や単価の変化
  • 金利・物価・税率などの変動(資金計画への影響)

修繕を先送りにすると、外観の劣化が進んでテナントが決まりにくくなり、その結果さらに修繕費の確保が難しくなる、という悪循環に陥る事例が多いようです。だからこそ、築年数という時間軸で建物全体を見渡し、早めに判断材料を持っておくことが大切だといえます。

築年数別・ビルの修繕タイムライン(新築〜35年)

ここからは、新築から35年までを5年ごとに区切り、建築関係と設備関係に分けて代表的な修繕の目安を見ていきます。いずれも一般的な目安であり、実際の時期は建物の造りや立地、使い方によって前後します。

築年数別・ビルの修繕タイムライン(新築〜35年)

経過年 建築関係の主な修繕 設備関係の主な修繕
5年 鉄部塗装(非屋外)、防水保護塗装
10年 外壁塗装、防水、シーリング、鉄部塗装(屋外)、大規模修繕(1回目) 給水・揚水・排水の各ポンプ
15年 外壁塗装、防水、シーリング、鉄部塗装(屋外) 空調(共用部)、給排水管(更生)、EV改修、情報通信・共用設備
20年 外壁・防水・下地補修を含む大規模修繕(2回目・調査含む) 給水ポンプ更新、自動火災報知機、送水口ほか
25年 外壁塗装、防水、鉄部塗装(屋外) 受水槽、高架水槽
30年 外壁塗装、防水、シーリング、鉄部塗装(屋外) 空調・給排水・EV・消防・電気・自家発電設備等の大規模更新
35年 外壁の全面張替、屋上・床の交換ほか大規模(外部) 給水ポンプ
出典:セミナー資料「ビル管理に伴う長期修繕計画について」(SFビルメンテナンス)をもとに作成。時期は一般的な目安です。

とくに築10〜15年ごろは、外壁塗装・防水・シーリングといった外装まわりの修繕が重なり、最初の大規模修繕を検討する時期にあたります。築20〜30年になると、給排水管やポンプ、空調、エレベーターなど設備の更新が本格化し、費用の山が大きくなりやすい時期です。

東京都心の中小オフィスビルでは、外壁のタイルやシーリングの劣化が歩行者や隣接する建物への影響に直結しやすく、外装の周期管理がとくに重要になります。

部位・設備別に見る不具合の発生目安と耐用年数

築年数の全体像に加えて、どの部位・設備がどのくらいで不具合が出やすいかを知っておくと、点検の優先順位をつけやすくなります。

部位別の不具合発生の目安

部位 目安時期 主な劣化・関連する調べ方
屋上(防水層) 10〜15年 防水層の劣化。雨水の浸入につながりやすい
外壁(タイル・塗装) 10〜15年 ひび割れ・浮き・落下。外壁打診調査で確認
給湯器・エアコン 10〜15年 機器寿命。猛暑・寒冷期の故障に注意
給排水管 20〜30年 腐食・詰まり。漏水の原因になりやすい
エレベーター 20〜25年 主要部品の更新・改修の検討時期
出典:セミナー資料(不具合発生時期の目安)をもとに作成。建て方・立地・使い方により前後します。

外壁のタイルの浮きやひび割れは10〜15年を目安に進みやすく、落下の予防という観点でも定期的な確認が欠かせません。外壁の詳しい調べ方は関連記事「外壁打診調査の方法と費用」で、目視・打診・ドローン赤外線の使い分けとあわせて解説しています。

給排水管は「建物の血管」にたとえられる部位で、20〜30年を目安に腐食や詰まりが表面化しやすくなります。天井のしみや原因のわからない水漏れが出たときの調べ方は関連記事「漏水調査の方法と流れ」でご確認いただけます。

主要設備の耐用年数の目安

設備 耐用年数の目安 備考
エレベーター 20〜25年 適正な保守点検が前提。法定耐用年数は17年
キュービクル(受電設備) 20〜30年 部品交換で延命可。法定耐用年数は15年
電気温水器 15〜20年 故障前の計画的な交換が安心
パッケージエアコン 10〜15年 猛暑・寒冷期に故障が集中しやすい
消防設備 法定8年〜 機器の旧式化に注意。点検義務あり
貯水槽 15〜25年 表面の劣化・亀裂が生じやすい
給排水管 20〜30年 予防保全が建物寿命を左右する
出典:セミナー資料(設備の耐用年数)をもとに作成。実使用年数は保守状況により変動します。

表の「法定耐用年数」は税務上の区分で、実際に使える年数とは必ずしも一致しません。たとえばエレベーターは法定耐用年数17年とされますが、適切な保守点検を行えば20〜25年程度の使用が見込めるとされています。

給排水管が更新の時期を迎えたとき、内側から被膜をつくる「更生工事」と、配管そのものを取り替える「更新工事」のどちらを選ぶかは、費用と耐久性のバランスで判断が分かれます。両者の違いは関連記事「給排水管の更生工事と更新工事の違い」で比較しています。

大規模修繕の周期と、まず取り組むこと

外壁・防水を中心とした大規模修繕は、おおむね10〜15年の周期で巡ってくると考えられています。1回目は築10〜15年ごろ、2回目は築20年前後、3回目は築30年前後が一つの目安です。ただしこれは一般的な周期で、適した時期は建物ごとに異なります。

長期にわたり都心のビルにかかわってきた経験からいえば、同じ築年数でも、日当たりや前面道路の交通量、これまでの手入れの頻度によって、劣化の進み方は大きく変わります。「築○年だから今すぐ」と一律に決めるよりも、まず現状を把握することが、無駄のない修繕計画の出発点になります。

その最初の一歩が、専門家による建物調査・診断です。現地を確認して劣化の状況をレポートにまとめ、優先順位をつけた修繕計画を立てるもので、費用は建物の状況をうかがったうえでお見積りいたします。全体像が見えると、長期修繕計画や資金計画も現実的なものに落とし込みやすくなります。大規模修繕工事の進め方や対応範囲は関連記事「ビルの大規模修繕工事」のページで紹介しています。

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まとめ|築年数の「地図」を持ち、まず現状把握から

ビルの修繕は、築年数という時間軸で見ると大きな流れがつかめます。築10〜15年で外装まわりの最初の大規模修繕、築20〜30年で設備更新の山、というリズムを頭に入れておくだけでも、資金の準備や業者選びに余裕が生まれます。

一方で、適した修繕の時期は建物ごとに違うため、タイムラインはあくまで目安です。ご自身のビルが今どの段階にあるのかを確かめたいときは、まず現状の把握から始めてみてください。東京都心の中小オフィスビルを長年管理してきた当社が、建物の状態に合わせてご相談を承ります。

修繕の時期や進め方で迷ったら、お気軽にご相談ください

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SFビルメンテナンス株式会社

この記事について

SFビルメンテナンス編集部

1979年の設立以来、東京都心の中小オフィスビル*1を対象に、ビル総合管理・清掃・漏水調査・外壁打診調査・修繕工事を手がけています。本記事は、当社の現場での実務と施工記録をもとに編集部が執筆しました。

※ 監修者情報は記事冒頭に記載