給排水管の劣化を指摘され、「更生工事」と「更新工事」のどちらを選べばよいか迷っていませんか。
二つの工法には、それぞれメリットと適用条件があります。適切な選択は、築年数だけでなく、配管の材質や劣化状況、建物の利用状況、今後の修繕計画によって変わります。
本記事では、更生工事と更新工事の仕組みや違い、判断する際のポイントを、東京都心でオフィスビルを管理してきた視点からご説明します。
記事監修者
茂木 健一(もぎ けんいち)
SFビルメンテナンス株式会社 専務取締役
東京都心の中小オフィスビル*1を対象に、ビルの総合管理から漏水調査・外壁打診調査・大規模修繕まで、建物の維持保全を担う。ビルオーナー向けに長期修繕計画や設備の更新判断をテーマとしたセミナー講師も務め、建物の劣化診断と修繕計画に長く携わっている。
更生か更新か、判断に迷ったら
配管の状態がわからないまま、工法を決める必要はありません。まずは現在の状態を確認し、建物に適した方法を整理することが大切です。まずはお気軽にご相談ください。
※ 秘密厳守・営業の押し売りは一切ありません/東京23区・横浜市・川崎市を中心に対応しています
給排水管が「建物の血管」と呼ばれる理由
給排水管は、建物内の各所へ水を届け、使用した水を建物外へ排出する重要な設備です。人の体に例えると、建物のすみずみまで水を循環させる「血管」のような役割を担っています。
配管は、材質や設置環境、使用状況などによって劣化の進み方が異なります。経年によって腐食やサビ、付着物、詰まりなどが生じると、漏水や赤水、排水不良などの不具合につながることがあります。
こうした症状や劣化の兆候が見られた場合は、配管の状態を調査したうえで、更生工事または更新工事を検討します。修繕時期は一律の年数だけで決めず、調査・診断結果をもとに判断することが重要です。

更生工事(ライニング)とは|既存の配管を活かして機能回復を図る工法
更生工事は、既存の配管を撤去せず、内部から機能を回復・延命させる工法です。
一般的には、配管内部のサビや付着物を洗浄・研磨したうえで、樹脂などによる新たな内面層を形成します。具体的な施工方法は、給水管・排水管の種類や採用する工法によって異なります。

既存の配管を利用するため、更新工事と比べて壁や天井の解体範囲を抑えやすく、工期や費用、建物利用への影響を軽減できる場合があります。
一方で、すべての配管に施工できるわけではありません。腐食や変形が著しい場合や、採用する工法の適用条件を満たさない場合には、更新工事が必要になります。
また、更生後の使用可能期間や保証内容は、工法や材料、既存管の状態によって異なるため、採用する工法ごとに確認する必要があります。
更新工事(取替)とは|古い配管を撤去して新しい配管へ取り替える工法
更新工事は、既存の配管を撤去し、新しい配管に取り替える工法です。
腐食や劣化が進み、更生工事の適用が難しい場合や、建物を長期的に使用する計画がある場合などに検討されます。新しい管材や現在の仕様を採用できるため、配管設備を根本的に見直せる点が特徴です。
一方で、配管が壁や天井の内部にある場合は、解体や復旧工事が必要になることがあります。そのため、更生工事と比べて費用や工期が大きくなりやすく、騒音や振動、断水、テナント営業への影響にも配慮が必要です。
既存の配管を撤去せず、新しいルートに配管する場合には、配管が露出し、室内や共用部の美観に影響することもあります。
更生工事と更新工事の比較表
二つの工法の違いを、主な観点で整理すると次のとおりです。ご自身の建物の状況に照らしながらご確認ください。
| 項目 | 更生工事(ライニング) | 更新工事(取替) |
| 工事内容 | 既存管の内部を処理し、機能回復・延命を図る | 既存管を新しい配管へ取り替える |
| 費用 | 比較的抑えやすい | 高くなりやすい |
| 工期 | 比較的短くしやすい | 長くなりやすい |
| 解体・復旧 | 範囲を抑えやすい | 必要となる場合が多い |
| 騒音・振動 | 比較的抑えやすいが、洗浄・研磨時には発生する | 解体・復旧により大きくなりやすい |
| 適用条件 | 既存管が採用工法の施工条件を満たす場合 | 劣化が進んでいる場合や、根本的な更新が必要な場合 |
| 使用期間 | 工法・材料・配管状態によって異なる | 新しい管材や施工条件によって異なる |
| 適したケース | 工期や建物利用への影響を抑えたい場合 | 長期使用や設備の全面的な見直しを重視する場合 |
自分のビルはどちらが向いているか知りたい方へ
判断の基準はわかっても、実際の建物に当てはめるのは難しいものです。お役立ちガイドと個別のご相談をご用意しています。
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どちらを選ぶべきか|判断の3つの基準
更生工事と更新工事は、どちらか一方が常に優れているわけではありません。建物の状態と今後の運用方針を踏まえて選ぶ必要があります。
1.配管の劣化状況と工法の適用条件
まず確認すべきなのは、現在の配管が更生工事に耐えられる状態かどうかです。
内視鏡調査や抜管調査などにより、腐食、サビ、付着物、穴あき、変形、継手部分などの状態を確認します。その結果をもとに、適用可能な工法を検討します。
2.初期費用だけでなく、今後の建物利用期間を考える
当面の工事費や工期を抑えたい場合には、更生工事が有力な選択肢になります。
一方、建物を今後も長期間保有・運用する場合や、他の設備改修と同時に工事を行う場合には、更新工事が適することもあります。
初期費用だけでなく、将来の再改修時期や修繕計画を含めて比較することが大切です。
3.テナント営業や建物利用への影響
オフィスビルでは、断水可能な時間帯、作業音、工事区画への立ち入り、テナントの営業時間なども重要な判断材料です。
建物を使用しながら工事を行う場合は、施工範囲や工程を細かく分けるなど、営業への影響を抑える工事計画が必要になります。

東京都心の中小オフィスビルではどう考えるか
東京都心の中小オフィスビルでは、テナントが入居・営業した状態で工事を行うケースが多くあります。また、隣接建物との距離が近く、資材の搬出入や作業時間、騒音・振動への配慮が必要になることもあります。
当社が東京都心で管理してきたオフィスビルにおいても、配管の劣化状況だけでなく、テナントの営業状況、工事可能な時間帯、今後の保有方針などを含めて工法を検討することが重要だと考えています。
築年数だけで更生・更新を決めるのではなく、まず配管の状態を調査し、建物の使われ方や中長期の修繕計画に照らして判断することが、工事後の後悔を減らすことにつながります。
まとめ|迷ったら、まず配管の状態を把握することから
給排水管の更生工事と更新工事には、それぞれに特徴と適用条件があります。どちらか一方が、すべての建物にとって正解というわけではありません。
判断の第一歩は、配管の材質や劣化状況、施工条件を把握することです。
SFビルメンテナンスでは、建物の利用状況や今後の修繕計画も踏まえ、更生工事と更新工事のどちらが適しているかを整理します。工法を決める前の段階から、お気軽にご相談ください。
給排水管の修繕・改修について相談する
更生工事・更新工事のどちらが適しているか、建物の状態を踏まえて一緒に整理します。現状の診断からご相談いただけます。
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SFビルメンテナンス編集部
1979年の設立以来、東京都心の中小オフィスビル*1を対象に、ビル総合管理・清掃・漏水調査・外壁打診調査・修繕工事を手がけています。本記事は、当社の現場での実務と施工記録をもとに編集部が執筆しました。
※ 監修者情報は記事冒頭に記載